
コロナ禍において、ガストロノミーへの欲が薄れてしまう食通も少なからずいるのではないでしょうか。
栄養は私たちの免疫系を整える重要な役割を担っているにも関わらず、どんなに美味しいお料理を食べ続けても、健康を守ってくれる保障はありません。
ガストロノミーと本当の意味におけるヘルシーな料理の間にはいつまでたっても大きな壁があるため、世界を脅かす感染症によって、素晴らしい美食の魔法が解け、我に返ってしまいそうになるのです。
「美食外交」という言葉もあるように、食事は円滑なコミュニケーションや友好に欠かせません。
しかし多くの場合、そういった場の食事は豪華ながら不健康なものになりがちで、単なる相手への敬意やこちらの意思表明の道具や手段になってしまうという悲しい現実も。
「美味しさを分かち合う」「相手や自身の健康を配慮した美食」。これが新しい時代には必要です。サスティナーブルな今日の価値観においても、美味しく残さず食べられることは絶対条件です。
これからの食のありかたについて自問自答を繰り返す中、ふと、以前に伺ったザ・オークラ東京の「ヌーヴェルエポック」のお料理を思い出しました。
すでにご存知の方も多いと思いますが、ホテルオークラはザ・オークラ東京に生まれ変わり、メインダイニングはヘルシー&ガストロノミーをテーマに掲げたヌーヴェルエポックとなりました。
これまでの多くの食体験からは、この手の改革は健康と美味しさの両立が難しいという印象を強く受けてきたため、ヌーヴェルエポックにも伺う勇気が湧かず、オープンしてしばらくたってからの訪問となりました。この頃はメニューは季節ごとに入れ替わるとのことで、すでに2シーズン目のメニューもそろそろ終盤の頃でした。
良い意味で裏切られた感じがしました。
和に由来するプレバイオティクスな麹も使用されていました。ただキーワードになる食材をとりいれるだけでなく、完成度の高いお料理の中で生き生きとしています。
栄養学的なテーマは少し盛り込み過ぎるあまり、相反する効果をうたったものが入り交じってしまっているのはもったいないと思いました。
美味しさや後味、味のバランスにおいてはとても満足できるものでした。
今後がますます楽しみです。
ワインと料理の組み合わせについては固定概念にとらわれず、ソムリエに相談しながら新しい冒険をしてみる方がよさそうです。
https://theokuratokyo.jp/dining/list/nouvelle_epoque/